トレーニングセットの組み方(3)
学内向けに書きました
今回は追い込むというよりは出力に焦点を置いたトレーニングについて紹介します。
<はじめに>
実は瞬発力と一言で言ってみても、瞬発力に内包される物体にかける力と速度はトレーニングによって様々です。
https://trainingfor.hatenablog.com/entry/2018/08/17/185012
上のサイトでも分かるように、瞬発力(パワー)は雑に言うと力と速度で成り立っています。その関係を示したものが力-速度曲線です。例えば、スプリントやバウンディングなど低強度かつ繰り返し行う運動は速度が、ウェイトトレーニングで扱える最大重量を挙上する時は力が大きくなります。ジャンプスクワットやクリーンはその間に位置し、かつ瞬発力が特に発揮される運動です。
これは競技に必要な出力のみを行う練習をすればいいというものではなく、それを把握しつつまた別の出力を鍛えることで全体を底上げするという目的で知っておく必要があります。特定のトレーニングによる伸び代には限界があり、したがって最適なトレーニングを続けることが最適解とは限らない、ということです。
ところで、ウェイトトレーニングでは基本的に力と速度であれば力が重視される局面が多いです。しかし、これはウェイトトレーニングが力を重視したトレーニングを専売特許として持っているからであって、速度に着目したトレーニングが出来ないからではありません。
<速度に着目したトレーニング>
- バリスティックトレーニング
バーベルや自重などの負荷に対して爆発的にパワーを発揮し、高速で挙上するトレーニングです。初動負荷トレーニングもこれの一部です。
素早く挙げるということ自体はフォームさえ整っていればメニューを問わず行えるので、スクワットやベンチプレスなどの他、マシンでのトレーニングでも適用できます。
重量は30%1RMかそれより大きいくらいでやればいいと思います。1RMが分からない場合は10回挙がる重量の半分くらいを目安に行えばいいと思います。30%1RMにこだわる必要はないですが、これより軽かったり70%1RMといった重たい重量でやるとパワーを出しきれなくなります。
このバリスティックトレーニングは素早く動かせるような重量である必要があるため、必然的にトレーニングボリュームは低くなります。一方で、とても高いパワーを発揮できるため強度は高くなります。
これらの特徴から、シーズンイン、特に試合前時の調整に有用で、ウェイトによって得たパワーを維持しつつ疲労を抜くことができます。シーズンオフでも疲労が溜まって全然トレーニングを行う体力が残っていないという場合、こちらに置き換えてやるとトレーニングが継続でき、パフォーマンスも維持できます。
しかし、この軽い重量を素早く上げるというトレーニングは本来のウェイトトレーニングの目的からはやや離れたものです。フィジカルを改造するという趣旨があるならば、普通のメニューを差し置いてこのバリスティックトレーニングを優先的に行うのはあまり適切ではありません。また、スピードを速くすればする程、フォームに対する意識は抜けてしまいます。スクワットやベンチプレスなどで行う場合は、ちゃんとフォームを一通り身につけてからやる必要があります。
プライオメトリクスとは、パワー発揮の前に動作に用いる筋を急激に伸ばして行う伸張反射(SSC)を用い、切り返し運動を行うものを指します。この切り返しは脊髄反射で大きな力を発揮することができると言われています。
「プライオメトリクストレーニング」のニュアンスで行うトレーニングに関しては、ハードルジャンプやバウンディング、ジャンプスクワットなどSSCを利用する中で低負荷かつ高速の運動を指す場合が多いと思われます。
が、実はSSCは切り返しが可能な種目では大方SSCを用いることが可能です。と言うよりむしろ無意識に用いられています。精神的負荷も和らぐことから、チーティングの1つとしても扱われています。
要は、「プライオメトリクストレーニング」としてはスピードを重視し、そうでなければスピードはあまり意識しないと言った具合です。(実際はそんな区別はしないと思います)
SSCトレーニングのセットは60~70%1RMで8回といった程よい重量と回数で始めるといいかなと思います。素早い切り返しを求める「プライオメトリクス」のニュアンスで行うならば30%1RMくらいで行うといいと思います。
チーティングとして用いる場合、いつもより重ための重量で行います。(例えばアームカールの場合、挙げてからバーベルを下ろす際に標的の上腕二頭筋のストレッチを意識しながら下ろし、もう負荷が抜けそうだなと思った位置で切り返しを始めるといいと思います。)
なお、切り返す区間での静から動のパワー発揮が養われないこと、ストレッチ時に最も負荷がかかるトレーニングで行うと怪我のリスクが比較的高いことには留意しておく必要があります。前者は必要に応じてボトムで止めてから挙げる「ストップ&ゴー」や「デッドストップ法」、後者は重量を落として行うと安全だと思います。
また、切り返しの練習を行うなら、切り返すまでの重りの速さはある程度抑えておく必要があります。落とすスピードが速いとSSC以外でのチーティングが入ってしまい、トレーニングとしての価値が弱くなる恐れがあるためです。
- ストップ&ゴー
挙上する前に一定時間止め、そこから爆発的に挙上するトレーニングです。「止める」という手順が明確にされていること以外はバリスティックトレーニングとほぼ同じなので、分けて書く必要があるかどうか悩みましたが書きました。
使う重量は50%1RMくらいで挙げるスピードが遅くなったと思った時点で終了します。バリスティックトレーニングみたく30%1RMでやってもいいと思うので、パワー発揮ができる重量であればそこら辺は適当でもいいと思います。
これも試合前の調整に使えるので、シーズンイン時に偶にメニューに挟んでやるといいと思います
- スピードを重視した固有の種目
ジャンプスクワットやスローベンチプレスはスクワットやベンチプレスとは異なる動作として変化しました。
ジャンプスクワット...その名の通りスクワットの動作からバーベルごとジャンプする種目です。しゃがむ時の深さはあまりこだわる必要はありませんが、接地してから腰を落とし始めるのではなく、接地と同時にしゃがみきるようにするのがコツになります。こうすることで強烈なハムケツのストレッチに耐えるという意味でパワーが鍛えられます。最低限スクワットの重量を挙げられるようになり(自重~自重*1.5くらい?)、ハムストリングや大臀筋に負荷をかけられるフォームを習得してからの方が安全に行えます。スクワットの重量がまだまだの人はスクワットを伸ばした方が良いと思います。
スローベンチプレス...フリーウェイトで行うベンチプレスと違い、「スミスマシン」というバーがマシンのレールに固定され上下にしか動かない器具を用いて行います。ベンチプレスと異なりバーを放り出せるため強く押し切れます。僕がそもそもこの種目をやったことがないのであんまり詳しく書けません。普通に前鋸筋や小胸筋も動員できる腕立てジャンプでもいいような気がします。
- (デッドストップ法)
ストップ&ゴーと粗方同じですが、こちらはスピードを重視しません。ついでとして説明したいために書きましたが、このトレーニングは普通に追い込むトレーニングとしても使います。デッドストップ法はボトムでの力の発揮に着目したトレーニングです。ボトムで止めて挙げる場合、挙上可能な重量は10%ほど下がるとされているため、いつもより1割ほど低い重量で行うといいと思います。
厳密には床やセーフティバーなどの器具へ一定時間留めるものをデッドストップとするものだと思ったのですが、ポーズスクワット、ポーズベンチなど体のみで止めるものも意図は同じなので一緒にしました。
- (クイックリフト)
スナッチやクリーン、ジャークなどの種目は瞬発力によって挙上するトレーニングです。スピードを意識するというよりはスピードが必要な種目です。これらは重たい物を速く挙げるという点で他の種目とは一線を画する種目です。パワー発揮を最大限行えるトレーニングで、かつ脚から背中に至るまで数多くの筋を動員して挙げることができる点で、クイックリフトはとても優秀なトレーニングです。
一方で、適切に効果を得るためにはとても苦労する種目でもあります。スクワットと同様に全身を使う上に動作が複雑、その上素速く挙げなければならないためです。
やり方などをここで詳しく書くと長くなるので省略しますが、クイックリフトがウェイトトレーニングでは瞬発力を鍛えるための中核を担うため載せました。
<雑記>
アスリートからすると、同じ重量でトレーニングするならより速いスピードで挙げた方が良いということは肌感覚として分かりますが、そうは言っても優先順位が最も高いのはフォームの丁寧さです。マシントレーニングやダンベルを用いた単純な動作においてはそこまで問題はありません。しかし、スクワットなどの複雑な運動で取り入れるにはまずその動作に慣れ、MAX重量もある程度把握できるレベルになってからでないと適切な強度で出来ず、かつ目的の部位に作用させることができません。
そのため速度を意識したトレーニングは初心者向けではありません。ウェイトトレーニングの初心者はまずちゃんとベーシックなトレーニングに慣れる方が大切だと思います。
トレーニングセットの組み方(2)
今回は1種目に着目したセットの組み方を書いていきます。
普通の重量でフルレンジが可能、かつ追い込むことが有効なトレーニングする場合に限定してピックアップします。それ以外のものについては次回に書きます。
前回はメインセットについて、それももっとも負荷の高いものについて書きましたが、アップとは別にそのお膳立てを用意したり、逆にキツいセットを反復したりと色々なバリエーションがあります。
<メインセットの種類>
メインセットとは、大雑把に言えばアップではないセットのことであり、特定の目的を元に設定したセットです。
実はセットの組み方は意外にも多くあります。僕が知っている限りで紹介していきます。
(MAXが120kgくらいで例を考えていきます。)
- ストレートセット
例) 100kg 5reps→100kg 5reps→100kg 5reps
同じ重量、同じ回数で複数セット行います。恐らく一番ポピュラーなセットの組み方だと思います。
始めのセットで目的の重量を扱い、疲労がない状態で挑めます。また、目的の重量を多く扱えます。
しかし、目的の重量を扱うまでに体を温める程のボリュームを積みにくいので、故障のリスクがあります。また、このセット自体が自分にとって限界である場合、2セット目以降は同じ回数をこなせる可能性は低いです。筋肥大を目的としていない限り、その後のセットで回数が減ってもあまり問題はないと思いますが、とはいえ、始めから追い込むようなものだとその後のセットは十分なものではなくなります。
したがって、ストレートセットの場合、1セット目であと1,2回は挙がる程度のものに設定した方がいいと思います。
- アセンディングセット
例) 90kg 6reps→100kg 5reps→110kg 3reps
重量を段々と上げてセットを行います。回数は特に決まりがある訳ではないですが、最後のセットでヘトヘトになったり途中で追い込みが発生するような回数では行いません。
この場合、アップが多少適当でもメインセットで徐々に重量を上げていき、安全にトレーニングができます。
しかし、アセンディングセットでは目的の重量を扱う時点でそれなりに疲労が溜まってしまいます。また、どの重量を扱うとどれくらいの回数が良いかと言うのをより細かく把握する必要があるため、メニューのセッティングはスタンダードセットよりも面倒です。
妥協案として、すべてのセットの回数を最後のセットで行う回数に合わせるというのもありです。負荷は減りますが、目的の重量を疲労なく望め、かつ安全に行えます。
- レストポーズ法
例) 110kg 2reps→110kg 1,2reps→110kg 1,2reps→110kg 1rep
筋力アップの場合、85%1RM~90%1RMほどの重量で行います。(例は90%1RMよりちょっと大きい)セット間の休憩は20秒ほどですぐに次のセットを行います。
1セットでは到底こなせないような回数をひとまとめに行えることや、2分ほどでしっかりした負荷を与え追い込むことができるため、時短として使うこともできます。
ただ、扱いに難がある高重量を何回も短時間で行うのは技術的に難しい面があり、普通のセット以上にケガをしやすいセットのため、慣れた人でないとオススメできません。また、スクワットやベンチプレスではセッティングまでに時間がかかるため、直してラックアップしてを短時間で繰り返すこのセットとは相性が悪いです。
デッドリフトやベントオーバーロー、その他ある程度高重量で扱えて地べたに重りを置ける種目はレストポーズ法で出来るので試してみてください。
亜種としてクラスタートレーニングというものもあります。1セット目の回数を控えめにして2セット目以降の回数を増やすものです。
- ウェーブローディング
Part 9 「ウェーブ・ローディング」 | That's トレーニング | DESIRE TO EVOLUTION | DNS ZONE
重量を波のように変動させつつ徐々に強度を高めていくトレーニングです。重たいものを持った後に軽いものを持つと、活動後増強と言って通常よりも軽く感じられる作用がありますが、これを活用したトレーニングです。
筋力や瞬発力アップの際に、高重量を扱いつつ負荷も増やすことがあるので隙のないトレーニングです。
しかし、6セット行うものなので必然的に時間を食うことになります。1回で全身をトレーニングする場合にこれを採用するのは難しいかもしれません。
他にもディセンディングセットやそれに派生したドロップセットは有名ですが、これは筋肥大に特化したメニューであり、かつそこまで短時間でこなせないものなのであまり採用しにくいというのが実情です。
<メインセットは何セットいるか>
特定のセットで固定されているものはありますが、多くのやり方ではメインセットは決まっていません。
ただ、追い込むセットは基本的に2セット、多くても3セットでいいと思います。メインセットを通して追い込まない、最後のセットだけ追い込むという場合はその限りではなく、この場合は5セット程やることもあります。
<アップはどれくらいやればいいのか>
ウェイトトレーニング前には原則ウォームアップを入れるものですが、この記事で言うアップは種目毎のアップを指します。トレ前のアップについてはあまり詳しくないので割愛します。(僕は股関節と肩甲骨周り、胸椎をほぐせたらすぐに始めます。静的ストレッチは出来る限り避けていますが、どうしても必要な部位は弾みを入れながらストレッチします。雰囲気でやってます。)
アップは扱える重量が重いほど長くやることになります。
僕がストレートセットのスクワット前にアップをやる場合、
20kg(バーのみ)→60kg→100kg→140kg→...
と40kgごと(50kgごとの時もある)に上げていき、目的の重量に達したらメインセットを始める、という風にしています。ベンチプレスなら20~40kgごと、ショルダープレスなら10~20kgごとと、扱える重量によって上げ幅は変えていきます。
一番最初にやるアップは高回数でフォームを意識しながら行い、それ以降は体に重量をならせる程度に気が済むまで挙げています。
<トレーニングセットの実際>
実は上の通りにストレートセットでやるとかなり時間がかかります。内訳は省きますが、複数人でアップをしながら行うと1種目で20分以上はかかり、セット数やレストの長さによっては30分かかることもあります。
アセンディングセットはメインセットでも重量を上げていきながら、途中のセットはアップとしての役割も果たします。目的の最大重量まで上げたらストレートセットにするという小回りの良さもあるため、個人的にはアセンディングセットをメインに取り組むことをお勧めします。
トレーニングセットの組み方(1)
今回はMAXを測定できる重量について、トレーニングをどう組むかを書いていきます。
もう一つ、まだMAXが確定できていない初心者がどう練習するかも書いていきます。
トレーニングのセットの組み方は拘らなければ割と単純です。週に3回以上やるのであれば経験値と慣れの意味合いで変わってきますが、週に1,2回アスリートが補助的に行う分には難しくないと思います。まして、始めた内であるならばむしろ単純な方が身につきやすいと思います。
<メニューの目的と種類>
ウェイトトレーニングは強度と負荷によって効果が変わってきます。大まかに分かると瞬発力•筋力、筋肥大、筋持久力となります。
- 瞬発力•筋力...高強度
- 筋肥大...中強度、高負荷
- 筋持久力...低強度
負荷量は筋肥大メニューで最大になるという意識だけあればいいと思います。
低強度...追い込んだ場合も負荷はそれなりに高いので筋肥大します。ジョギングやランニングと併用すると筋肥大は抑制されるとかどうとかを聞いたことはありますが、そこらへんはよく分からないです。
高強度...一概に高重量とは限らず、それほど重くないものでも素早く動かせば高強度になります。つまり、持つものの重さとそこにかける力が強度を表します。モーメントが関わる場合もあります。
まずはメインセットの組み方から書いていきます。
<挙上できる最大重量からメニューを作る>
上の3つないし4つを客観的に分けられるメニューの作り方として、最大重量から目的に応じて回数、そして重量を設定するものがあります。今のところ、これがメニューの組み立て方として最もポピュラーで王道だと思います。
http://www.taka-spo.or.jp/healths13.html
上のものを参考にすると、例えば最大重量(=1RM)の80%は通常8回までは挙げられる(=8RM)とされています。(RMとは反復最大回数のことで、1RMは1回挙げるのが限界である重量を指す)
つまり、筋肥大のメニューで追い込む時は、「1RMの80%を8回」が適当になるという訳です。
このサイトでは多少解釈は異なりますが、高重量を扱える種目(ベンチプレス、スクワットなど)については1~3RMは瞬発力、4~7RMは筋力、8~12RMは筋肥大とざっくり覚えておくといいと思います。
個人的な話ですが、僕の場合、1RMが得意で高く出る傾向があるので、例えば4回挙げられるとされる1RMの90%の重量では3回までしか挙げることができません。この指標もあくまで参考とするものなので、体質に応じて微妙に変えていく必要があります。
これも個人的な意見ですが、クリーンやスナッチなどのクイックリフトは上の指標が参考になりにくいです。挙上スピードで成否が分かれる特殊な要素があるからかも知れませんが、そもそもクイックリフトは筋肉を追い込む類のものではありません。しっかり挙げられる重量と回数を経験から設定していきましょう。
<RM換算からメニューをつくる>
あまり数をこなしていない種目についてはMAX重量がわからないという場合があります。一方で、8回や10回などであればやっていたりします。この場合、8回や10回やっている重量からMAXを推定でき、そこから3回や5回できる重量を導き出すことができます。換算の時は下のサイトの表を使いましょう。
もちろん個人差があるので、実際やってみると余裕だったり逆に全然できなかったりします。
なお、MAX重量を測るのが困難な種目についてもRM換算から擬似的にMAXを設定できます。
<初心者の場合>
初心者の場合、神経系の発達によりMAX重量は日々増加していきます。ある日5RMだった重量が次のトレーニングで6RM, 7RMになったりすることは珍しくありません。
この場合、そもそもMAXを考慮してセットを組むというやり方は破綻してしまいます。
よって、代わりに別のやり方を行う必要がある訳ですが、余り熟練していないフォームで毎回MAX重量を計ろうとすると怪我のリスクが高くなります。
僕の案としては、5RMないし10RMに挑戦し、規定回数で余裕があれば次の回は少し重量を増やして挑戦する、というのをお勧めします。(例えばスクワット、デッドリフトなら5~10kgずつ、クリーンやベントオーバーロー、ベンチプレスなら2.5~5kgずつ)
これで暫く記録が伸びなければ自分の扱える重量が判明したこととし、そのMAX重量かそれに相当する重量を元にメニューを作る、とすれば良いでしょう。
今回はメインセットのやり方を書きました。とは言ってもまだまだ初めてやる人、慣れてない人に向けて即興でメニューを考えられるように書いたのでマニアックな内容は書いていません。
逆に、ここに書いてあることはウェイトトレーニングによるパワーアップにおいては必須であるため、ちゃんと分かっておく必要があります。
デッドリフトやるなら(簡潔)
弊学向け、初心者向けでデッドリフトについてどういう意識をすれば良いかをまとめてみました。
実際は他のサイトを調べた方が有意義だと思いますが、ネットサーフィンする程のモチベーションがわかない弊学の人のために、足がかりとして役に立てばなあと思います。
なお、デッドリフト(ナローデッドリフト)はスクワットよりも身体的な面で習得が難しいです。
初心者が床から引くと柔軟性の問題やヒップヒンジの不慣れから、適切にハムケツをストレッチしきれずに背中や腰で挙げてしまう人も少なからずいます。
そういう訳で床から引くことがどうしてもできない場合、ルーマニアンデッドリフトの方をお勧めします。
ルーマニアンデッドリフト(RDL)は一度挙上したバーを地面につけないまま挙げ続けるものです。
こういう感じで詳しい解説がなされた動画があるので、正直他に書くことがあるのかという思いはあります。
0. まとめ
最初に簡潔な意識の仕方をまとめます。
スクワットと同様で、細かい部分は端折っています。
なお、普通のデッドリフトもRDLもあまり意識することは変わらないので前者に準拠して書いていきます。
<セッティング>
1. 肩幅かそれより狭い程度に足幅を設定する
2. 肩幅かそれより少し広い程度に手幅を設定する。
3. お尻を後ろに突き出し上半身を前に倒す
4. 背筋を一直線になるように意識し、胸を張る
5. バーは脚に擦り付ける
6. 腹圧を入れる
<挙上>
7. バーは最初から最後まで脚に付けながら挙げる
8. 胸の張り、背筋、腹圧を常に維持する
9. 膝下あたりまでは地面を蹴るように膝関節を伸ばす
10.膝上では後ろにやったお尻を前に戻す
11. 挙げ切った時はお尻の筋肉を締め切る
<その他>
12. 戻す時も脚につけながら戻す
13. 胸の張り、背筋、腹圧は戻すときも維持する。
14. 膝上まではお尻を突き出すように降ろし、膝下からは膝を気持ち前に出してやるように降ろす。
14個書きましたが、最後の3つは同じことを書いてるだけです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1. デッドリフトでは足幅を広げる事もよくありますが(スモウスタンスデッドリフト)、ハムケツ背中をターゲットに鍛えるなら肩幅くらいの方がいいです。
2. 手幅を広げることで背中へのアプローチが強くなります。RDLではあまり問題はありませんが、床引きではより腰を落とすか上体を倒すかをしないといけないので、初心者がやるならまずは肩幅からのほうがいいです。
3. スクワットでも取り上げた「ヒップヒンジ」のことです。デッドリフトや他にもベントオーバーローイング、クリーンやスナッチなど数多くの全身種目は、これが大なり小なりできないと満足にトレーニングができないと言っても過言ではありません。
4. 挙上中ではこれらを常に維持しなければならないため、挙上前から行います。ここでの胸を張るとは、肩甲骨を締めるというよりは背中上部の背骨を伸ばすことを意識します。猫背の人は意識するのが難しいかもしれません。
5. デッドリフト中は常に下半身にバーをつけた状態で挙げていきます。4を意識しながらの場合、脇を閉めるように近づける形になると思います。因みに、体にバーを寄せるのは主に広背筋によって行います。
6. スクワットと同様で腹圧はとても大切です。デッドリフトでは上半身、特に背筋へのアプローチが強いためより腹圧の重要性が高くなります。デッドリフトではヒップヒンジと腹圧が出来なければおそらく腰を痛めます。
7. 5の続きです。セッティングの時は付いていても、いざ挙上を始めると意識が抜けてバーが離れてしまうというのはよくあります。バーが脚から離れると、背骨がさながら釣り竿のような状態になり、とても背中への負担が大きくなることは言うまでもありません。原因はセッティング時から既にバーが離れていることや、挙上の際に上半身の連動が出遅れて前傾しすぎること、早い段階で膝が伸びきってしまうことなどがあります。
8. 3,4,6の維持です。挙上中の胸の張りに関してはそこまで重要でない(結果的に出来なくてもそこまで支障がない)と思われます。ただ、背筋を伸ばす(背中の下部)ことはヒップヒンジの維持に重要で、ここの意識が弱いと挙上中に腰が引けてへそが太ももから逃げるようになります。こうなるとハムストリングや大臀筋のストレッチも緩んでしまい、これらを利用して挙げることが難しくなります。3でいうハムケツを意識した挙上はもちろん重要です。
9. 体格によりさじ加減が異なるので膝下はあくまで目安ですが、最初は地面を蹴り出してバーを浮かせるイメージで挙げ始めます。床引きでは下腿と膝が少し前に出ており、この動作で下腿が垂直になります。これは個人的な感覚ですが、ここで蹴り出しができないと代わりに股関節を使いすぎるため、結果的に背中で挙げることになるのではと思います。なお、RDLではこの動作は行いません。
10. これはそのまま後ろに出したお尻を前に戻す動作です。(股関節伸展) 7,8,9ができればスクワットとほぼ同じなので割愛します。でも大事です。
11. デッドリフトでは最後に直立した状態になります。この時、胸を張り、お尻を収縮させきるイメージで直立の体勢です。ここで更に引こうと腰から曲げると腰を痛めるリスクがあるのでやめましょう。
12,13,14. 戻す時は挙げる時の逆の動作をします。特に初心者の場合、この動作でしっかりハムケツをストレッチしながら降ろすことでよりデッドリフトの旨みを得られます(ネガティブトレーニング)。RDLの場合床引きと違いフォームの再調整ができないので、ここで12,13,14を意識してゆっくり戻さないとフォームが崩れ、2回目以降の挙上で腰の負担が大きくなります。トレーニングの進行の上ではある意味戻すという動作が一番大事です。
<余談>
ハムストリングの肉離れの原因には急激な伸展に対して筋繊維が耐えられなくなるためという説があります。ボディメイクであれ競技力向上であれ、ウェイトトレーニングは挙げる動作(ポジティブ)だけではなく戻す動作(ネガティブ)についても理解する必要があります。スクワットやデッドリフト、レッグガール、グルートハムレイズなどでハムストリングの伸展を意識すれば、結果的に肉離れの予防になったりならなかったりするかもしれません。逆に、短期的にはハムストリングを消耗するトレーニングでもあるので、強度の高い他のトレーニングと併用すると肉離れのリスクは高まるかもしれません。
今回はナロースタンスデッドリフト(コンベンショナルデッドリフト)と、それに準拠したルーマニアンデッドリフトについて持っている知識と意識で書きました。ワイドスタンスデッドリフト(スモウスタンスデッドリフト)という足幅を広げて行う種目もあり、これは内転筋にも強く刺激を入れることができます。
背中で引くデッドリフトというのもあり、これは所謂「ぶっこぬき」と呼ばれるもので、釣竿のように背中が曲がった状態で挙上します。これは意識するというよりは個々人の挙げ方のクセみたいなところがあり、色々な理由でこちらの方が高重量を挙げやすい人はけっこういます。が、目的が単に下半身と連動の強化であるならばこれをなるべく避けた方がいいでしょう。あまり重量に拘りすぎない方がいい理由の1つがこれであり、まずは目的に沿ったフォームを作るのが第一です。
<さいごに>
スクワットとデッドリフトは違いはありますが、ハムストリングと大臀筋の強化という意味合いではおよそ一致しています。どちらもやってみて、よりやりやすいと思う方を重視するのも良いと思います。個人的にはどっちもして欲しいです。
これもかなり突貫で書いており、今回は個人的にスクワットよりもふわふわしたイメージのデッドリフトについて書いているので、また訂正するかもしれません。
スクワットやるなら(簡潔)
弊学向け、初心者向けでスクワットについてどういう意識をすれば良いかを急遽まとめてみました。
実際は他のサイトを調べた方が有意義だと思いますが、ネットサーフィンする程のモチベーションがわかない弊学の人のために、足がかりとして役に立てばなあと思います。
因みにYoutubeにこの記事より有用な動画があるので載せておきます
0. まとめ
最初に簡潔な意識の仕方をまとめます。
細かい部分は端折りましたが、教えてくれる人がいない中でも、初心者がこれを意識すれば恐らく改善されるであろう重要事項を箇条書きにしました。
これだけ見ても分からない部分があるはずなので、その場合は以降の解説(っぽいの)を読んで補完してください。この文章を書いてる相手がほぼ身内みたいなもんなので、直接聞いてくれてもいいです。
<しゃがむ前>
1. 足幅は肩幅で、爪先を少し外へ向ける。膝も爪先と同じ向きにする
2. バーを担ぐ時は肩甲骨を締めて肘を少し上げる
3. 息を吸い、お腹を膨らませて腹圧をかける (とても大事)
<しゃがむ時>
4. 足裏の真ん中よりは後ろに重心を置く
5. お尻を後ろに突き出すようにしゃがむ (とても大事)
(5'. 上半身を前に倒し、おへそと太ももで物を挟み込むかのようにしゃがむ)
6. ハムストリングと大臀筋のストレッチは絶対に逃がさない (とても大事)
7. しゃがみが深くなるにしたがって、膝を外向きに出し始めていく
<立ち上がり>
8. ストレッチしきった段階で足裏から体を起こし始める
9. 前に倒した上半身を立てる意識をする(とても大事)
10. 後ろに出したお尻を前に突き出すように立ち上がる
<その他>
11. バーは地面に垂直に動かす意識をする
とりあえず11個ほど要点を書きました。2と11以外は自重でもどこでも意識する練習ができます。スクワットができることによるリターンは少なからずあるので、暇な時に練習をしましょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1. 足幅をジャンプと似たようなスタンスの肩幅でとると立ち上がりが容易にできます。
爪先と膝を外向きにするのは7と関連しており、しゃがむ時に膝が内に入らないようにするためです。
2. 担いだバーは背中と腕によって支えられますが、上腕から肘を上げ、背中を引き締めるとバーの安定性が増します。
3. 腹圧をかけるとは、簡単に言えば「お腹を中年太りのおっさんみたいに膨らませる」ということです。
骨盤から水平方向に離れたところにバーを担ぐ以上、ここで体幹をしっかりと固めないと背中を痛めかねないため、特に重要な項目です。
腹圧はスクワットの動作において常に必要なものなので、しゃがみこんだときでも確実に出来るようにしましょう。
(ベルトを付けているならその圧に逆らうようにお腹に力を入れてやると楽に腹圧が入ります。)
4. 初心者の内は重心を足裏の後ろ側に乗せるという意識をすると、5の動作で滑らかにお尻を後ろに出せると思います。
5. 日常生活で馴染みがない動作なので一番意識が難しいと思いますが、それ故に最も重要な部分です。
この動作により、骨盤を前傾させてハムストリングと大臀筋のストレッチが強くすることができます。
正式には「ヒップヒンジ」という動作であり、これに関しては動画などを検索して見てもらうのが一番です。
(11/13追加) お尻は後ろに突き出すようにしますが、それと同時に膝も自然な範囲で曲がっている必要があります。ヒップヒンジが正常にできていれば膝が曲がってもハムケツで体重を支えられるので、膝にあまり負担はかかりません。
6. アスリートにとって、スクワットはおおよそハムケツを使う目的で行われているはずです。
5ができればハムケツにはまずストレッチが入っているはずですが、一番深いところまでじゃがむと、しばしばそのストレッチを抜いてしまいがちです。
こうなると代わりに膝と腰が今までハムケツが背負っていた負荷を受けることになり、故障の原因となります。
死んでも膝と腰は守りましょう。
7. 膝を外側に出すことでハムケツの他により内転筋群を動員させることができます。
また、膝を内側に巻いてしまうと膝の靭帯を痛めるリスクが高まるので、安全面でも重要です。
8. これはテクニックの要素が強いのであまり重要ではないですが、慣れてきたら足裏の負荷に集中してやると、立ち上がりがスムーズに進められるようになります。
9. しゃがむまでの意識が出来ている人は立ち上がりでハムケツを使うことはできるのですが、上半身が出遅れてお尻だけ吊り上がるというケースがあります。
立ち上がりが成功した時点で、上半身の立て直しを意識して、しっかりと全身を連動させたスクワットにしましょう。
10. 後ろに突き出したお尻はもちろん最後には前に戻す必要があります。9と揃えて意識しましょう。
11. 厳密にはピッタリ垂直ではないのですが、基本的にスクワットの動作中は、バーが垂直に動くことが適切な負荷を効率良く得られるという点で理想だと言われています。
誰かに見てもらう時はその点もチェックしてもらっても良いと思います。
<余談> スクワットに限らず、ウェイトトレーニングのあらゆる種目は、本人の目的によって必要なフォーム、重量、回数などが変わってきます。
が、初めから色んな種類のフォームを身につけようとすると訳が分からなくなるのと思うので、そこらへんは今回はざっくりさせました。
部活の帰り道の2時間で突貫で書いたものなので、また書き直し書き加えがあるかもしれません。
<最後に> これは動作中の意識ではないのですが、セーフティバーは必ず付けておきましょう。
自分が一番深くしゃがむ位置よりも少し低いところに設置すると、邪魔になりません。
<11/13>
お尻に効かせるスクワットといえば「膝を足先より前に出さない」というコツを聞きますが、膝の位置は位置は大腿や下腿、上体の長さの比に依存するので、人によって適正な位置が異なります。膝が出るかでないかはあくまで二次的なものです。